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泉美木蘭
2017.7.15 06:29

開学時期未公表なのに開学準備できた加計学園の怪

京都産業大学が、獣医学部新設断念を発表し、記者会見を行った。
<広域的に獣医学部のない地域に限る>という規制強化について、
黒坂光副学長は、

「『広域的』ということが本学にとって、ちょっと不利だな
とは思ったが、
それだけをもって対象外になったとは思って
いなかったので、引き続き継続
して見守っていた」

という。
不利になったとは思いつつも、かなりの研究実績があって、構想にも
自負があったそうだし、となりの
大阪府に獣医系学部があっても、
うちは京都だから大丈夫では? という希望はまだあったのだろう。
ところが、2017年1月に政府から出された告示によると、
<一校に限る><2018年度開学>という条件が加わっていた。
「獣医学部の開学時期が平成30年4月と知ったのは、事業者が公募された
今年1月のこと」

「構想はいい準備ができたが、準備期間が足りなかった。
その後、加計学園が申請することとなり、国際水準の獣医学教育に足る、
十分な経験、質の高い教員を必要な人数確保するのは困難と判断した」

赤字の部分が特に大事なところだ。
ネットのおバカちゃんたちが、
「人材不足で断念したんじゃないか、不透明な決定とは思ってないそう
じゃないか! 安倍ちゃん冤罪!」
とか言ってるらしいが、本当にばかなのか?

安倍首相は「二校でも三校でも、日本中を獣医だらけにしてやるぜ!」
と息巻いていたじゃないか。
だけど、実質、教員の取り合いになってしまい、開設どころじゃないと
いうことが明らかになったわけだ。
これは、安倍首相がいかに「何もわかってないか」がよくわかった、
赤っ恥の瞬間である。

さらにこんな重要なことも語られている。


「2018年4月開学は考えていなかった。
国家戦略特区の岩盤規制に穴を開ける、開けないが決まっていない段階。
認定されても、そこから文部科学省の認可申請をクリアする必要がある。
通常の単独申請ならば、文科省への申請が認定されれば開設できるが、
今回のケースは違う。
大学が準備をするスタートは、そこ(開学時期)を確認した上でないと、
人、建物、設備は整えられないと感じていた

50年間新設が認められなかった獣医系学部、それがまず認められるのか
どうかもわからない。
さらに、開学時期がわからない状態で、大学がリスクをとって、不動産
を抑えたりゼネコンに見積もりしてもらうこともできない。

感染症の研究を行うのだから、ただ校舎を建てるだけでもないはずだ。
危険なウイルスの実験に耐えうる厳重な専門設備、耐震設計も必要で、
町の工務店に頼んで、さくさく材料を揃えて、ハイヨと建てられるもの
でもないだろう。

また、ぜひ招き入れたい教授がいても、声がかけられない。
「うちが新しく建設する研究施設で教鞭をとってください」
「いつから?」
「それはまだ未定です」
これでは誰も信用しない。信用できないのにいまの職場を整理しようと
考える人はいない。


ここで、加計学園の開学準備の不可解さが浮き彫りになっている。
京都産業大学は、開学時期を知らされておらず、いまだ構想の段階から
実際にアクションできずにいる状態だったにもかかわらず、
加計学園のほうは、2015年の夏から
すでに教員集めに乗り出していた。

さらに、まだ事業者募集の告示もされていない2016年10月には、
すでに、土地のボーリング調査を行っていたのだ。
ここが最も重要な部分だろう。
加計学園は、なんで自信満々にこんなことができたんだ?
知っていたんじゃないか?
「日本で一番の権力者が、開学させてくれる」と。

加計学園に勧誘された教員に、取材してみるべきでは?
相当横着な声の掛け方だったのかもしれないが、そこに「開学が確実」
という裏付けをにおわす発言があったかもしれない。

しかも、国会で、迫真の尋問をくりひろげていた自由党の森裕子議員が、
「2018年4月開学」の告示が出されるよりも前に、愛媛県今治市が、
この開学時期を明記した進行予定表をつくり、内閣府に送付していたこと
もすでに発覚している。
加計学園、今治市、そして国には「2018年4月開学ということで」という
共通認識があったはずだ。


記者会見から都合のいい文言だけを抜き出して、100字程度で安倍擁護
をする風潮に惑わされず、京都産業大学と加計学園の間にある大きな差、
これをちゃんと見て、深堀りしてほしい。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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